事 案 |
原告Aら4名が,被告Bら3名に対し,別紙1記載の自筆証書遺言(以下「本件遺言書」という。)は訴外亡Eによって作成されたものではないから,自筆証書遺言の形式要件を欠き,仮にEが自筆したものであるとしても,当時のEの痴呆症(以下「認知症」という。)の進行からすれば,意思能力を欠くものであって,いずれにせよ無効であるとして,遺言の無効確認を求める訴え |
争 点 |
1.本件遺言書がEによって作成されたものであるか(自筆証書遺言の形式要件) 2.本件遺言書作成当時Eに遺言をするだけの意思能力があったか(実質要件) |
結 論 |
本件遺言書については,遺言者たるEが,自筆証書遺言の形式要件である「その全文,日附及び氏名を自書し」(民法968条1項)た事実はなく,自筆証書遺言の様式性を具備していないものであるから,本件遺言書作成当時のEの意思能力について判断するまでもなく,自筆証書遺言として無効 |
理 由 |
本件遺言書に記載された文字は,証拠上Eが作成したと認められる甲第7号証の筆跡とは別のもので,その他,当事者双方がそれぞれEが作成したものと主張する過去の書類の筆跡とも一致しないことのみでも明らかであるし,加えて,脳血管性の認知症により,はいかい等の症状は本件遺言書作成の2年以上前から発現し,そのころから既に字に乱れが生じ,本件遺言書作成直前の段階では,時間の感覚を喪失する,自分の息子を亡くなった夫と間違え,それを指摘しても極短時間しか認識できないなどの状態に至っていたEが,突如として別紙1記載の遺言書のような文字で日付などを正確に記載したとするのはあまりに不自然であることからも明らかである。 |