1 遺産分割調停の申立て
共同相続人間で協議が整わないとき、または協議をすることができないとき、各相続人はその分割を求めて家庭裁判所に申立をすることができます。申立は、相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所で行います(相続人が複数いて住所地が異なる場合は、そのすべてに土地管轄が生じる)。
2 遺産分割調停の手続き
調停手続では,調停委員が当事者双方から事情を聴き,必要に応じて資料等を提出してもらったり,遺産について鑑定を行うなどして事情をよく把握したうえで,各当事者がそれぞれどのような分割方法を希望しているか意向を聴取し,解決案を提示したり,解決のために必要な助言をし,合意を目指し話合いが進められます。
協議が紛糾していて、相手方とは顔を合わせたくないという場合でも、通常は、申立人と相手方とは時間をずらして別々に調停室に呼ばれるので、ご安心下さい。
【遺産分割の手順】 ①相続人の範囲を確定する ②相続分を確定する ③遺産の範囲を確定する ④遺産を評価する ⑤特別受益と特別受益の額を確定する ⑥寄与相続人と寄与分を確定する ⑦特別受益及び寄与分を踏まえて、相続開始時の具体的な相続分率を算出する ⑧具体的相続分率を遺産分割時における遺産分割取得分額に引き直す ⑨遺産分割方法を決定する |
3 調停がまとまらない場合~審判~
話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され,家事審判官(裁判官)が,遺産に属する物又は権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して,審判をすることになります。
4 不出頭当事者への対応
(1)遠方に住んでいるため調停に出頭できない場合
遺産分割調停の成立には相続人全員の合意が必要となりますが、相続人自身が高齢であったり、遠方に住んでいる等の理由から、調停に出頭することができず、他の共同相続人に任せることがあります。このように、不出頭当事者が出頭当事者の一部に進行を委ねている場合には、出頭当事者のみで調停期日を重ね、必要に応じ、不出頭当事者の真意を確認して手続を進め、受諾書面を活用するなどして、最終調停を成立させることになります。
ここで「受諾書面」とは、あらかじめ調停委員会から示された調停条項案に合意する旨の書面(受諾書面)を,その調停委員会に提出し,その他の相続人が調停期日に出席してその調停条項案に合意したときは,調停期日に出席できなかった相続人がいても,調停を成立させることができるという制度です。
(2)相続人の所在が不明の場合
不出頭の理由が所在不明である場合には、不在者財産管理人の選任申立てを検討させることになります。従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合に,家庭裁判所は,申立てにより,不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため,財産管理人選任等の処分を行うことができます。このようにして選任された不在者財産管理人は,不在者の財産を管理,保存するほか,家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で,不在者に代わって,遺産分割を行うことができます。
(3)その他
体調が悪い、分割に反対しているなどの理由で出頭しない場合や不出頭の具体的理由が明らかではない場合、その真意を明らかにするため、心理学などの行動科学の専門的知見を有する家庭裁判所調査官が、出頭勧告、意向調査を行うことになります。出頭勧告は、相手が正当な理由がないのに調停に出頭してこない場合に出されます。この出頭勧告には、相手を調停に出頭させるだけの強制力はありませんが、出頭勧告を無視すると5万円以下の罰金が科せられます。それでも、無視を続けて調停に出頭をしてこない場合には調停不成立となります。